ことばでこぼれ落ちるものを、レゴで掬う。――『LEGO de 自己表現』ワークショップを開催いたしました

2023年11月。大人たちが思わず童心に還り、夢中で取り組んでしまう体感型アートワークショップを実施いたしました。
その名も、『LEGO de 自己表現〜ジブン再発見〜』。
今回ファシリテートしていただいたのは、LEGO®シリアスプレイ®ファシリテーターのゆうじさん(鎮目 悠治さん)。前日の深夜2時まで「自分とのつながり×他者とのつながり」というテーマにこだわり抜き、愛を込めてプログラムを構成・アレンジしてくれました。
「こんなにも、無意識が作品に現れるのか!」 頭での言語化やロジックだけの自己理解を超え、手を動かすことで心の内側にあるやわらかな部分が浮かび上がった、驚きと感動に満ちた時間の軌跡をレポートします。
手を動かした先に現れる、取り繕うことのない「ありのまま」
「自由につくっていいよ」と言われると、大人はどうしても「正解」を探してフリーズしてしまいがちです。しかし、ベースとなる形が存在するレゴブロックは、アートワークの入り口として非常に優秀です。
ワークショップの序盤、参加者の皆さんは「何を作ればいいか分からない」という戸惑いの状態からスタートしました。しかし、いざ制限時間の中でパッとパーツを手に取ると、取り繕った思考が介入する隙もなく、直感的に手が動き始めるのです。
選んだ色、かたち、大きさ、パーツ。頭を使う前に手が選んだ造形には、その人の「ありのままの現在地」が映し出されていました。それはまるで、楽しい箱庭療法(カウンセリングの技法)のようでもありました。
嫌いな自分を表現し、境界線を超えて「世界」とつながる
今回のプログラムで特にドラマチックだったのが、“嫌いな自分(自分の苦手な部分や向き合いたくないところ)をレゴで表現するワーク”、そしてそれを他者と連結させていくプロセスでした。
あるメンバーは、自分と相手の間にばちっと明確な境界線を引いた作品を作りました。 「憧れの世界に行くのが怖くて、自分の世界も守りたくて、境界線を引いて一人になってしまう。そんな自分が嫌いだ」と語ってくれました。

しかし、ワークショップが後半に進み、「つながりたい人」や「なりたい自分」に向けて作品をさらに発展させていく中で、感動的な変化が起こります。
最後のチェックアウト(振り返り)のとき、彼は自らの意志でこう言いました。 「そんな僕の作品(嫌いな自分)と、〇〇さんのつながりの作品を、糸でつなげます」
自ら引いてしまったはずの境界線を越えて、外の世界へとつながりを紡ぎにいったその姿。 言葉だけの対話ではなかなか到達できない、心の紐がふわりと緩んだ瞬間であり、場全体が言葉にできないあたたかな空気に包まれました。
生み出された作品には、自分でも気づかなかった意味がある
今回のワークでは、一人ひとりの「苦手」や「悩み」をひとつの文章(スーパーストーリー)にまとめるという、少しハードなワークにも挑戦しました。
お互いの「嫌い」を「それってどういう感じ?」と深く掘り下げていくプロセスは、一見難しく思えましたが、完成してみると驚くべき共通点が見えてきました。それは、本当は外に表現したい自分がいるのに、そこに反する『嫌いな自分』もいて、うまく調和できないモヤモヤをみんなが共通して持っている、ということでした。それは、作品を通じてアイデンティティが「わたし」から「わたしたち」に拡がった瞬間でした。
同じレゴの箱からパーツを選んでいるのに、出来上がる作品は1つとして同じものがありません。

「正しい作品」なんてこの世に存在しない。それぞれが持った個性がそのまま発揮され、どんな作品もお互いに認め合う。良い作品を作ろうとするのではなく、「それぞれの生み出された作品に価値があり、それ以上でも以下でもない」という絶対的な安心感が、その場に流れていたからこそ、ありのままをさらけ出すことができました。
参加者の声:大人になり忘れていた「自由」と「つながり」を取り戻す
ワークショップを終えた参加者の皆さんから、たくさんの深い気づきが寄せられました。その一部をご紹介します。
大人になり、気付かぬうちに社会のルールに締め付けられていて、最初は『どこまで自分を出していいんだろう』と苦労しました。でもレゴの連結や別のモノに置き換える自由さに触れて、子どもの頃のような制限のないアイデアを取り戻したいなと思いました。 同じLEGOから生まれるのに、全く違う作品になる。「正しい」ってこの世に存在しないんだなと思いました。それぞれが持った個性が発揮されて、どんな作品も認め合う。他の人が思ったことを気軽に質問する。後付けで無意識だった自分の内側とつながれる。良い作品よ最後のワークでは、一人では生きていけないんだから『助け合えばいいじゃん』と人に頼れなかった自分の境界線を超えられた気がします」
(20代・会社員)
「会社では早く情報を伝えるために付箋に文字を起こしたりするけれど、それでは取りこぼしている気持ちも多いなと気づきました。人は言葉で会話をするから言葉を求めてしまうけれど、日常会話ができているようで、実は言葉足らずなんだろうなと考えさせられました。
私はほぼレゴを触ったことがなくて、保育園のおもちゃ箱にあった程度の思い出。レゴへの固定概念とか、これはこう使う部品!と言う認識がない状態だったからこそ(例えば、ミニフィグの足部品を私は足と思っていませんでした…)こんなのできるんじゃないか?こういう風に出来そう!でとりあえず組み立ててみる。キラキラクリアなブロックを集めて自分の台にくっつけて自分のモノにしていく。
結果、みんなと違うものが出来て「自分はこういう自分のクリエイティブ思考が好きなんだ!」と今まで考えていなかった「自分の●●が好き!」のフレーズが出来上がりました。好きでも苦手でも、一気にみんなの心や思考が形として目の前に出される。それを視覚からも情報をキャッチしてその人を見ていく。とてもかけがえのない時間でした。 」
(20代・会社員)
「全体を通して印象的だったのは、無意識に組み立てたはずなのに、後から他者からの問いや好奇心に満ちた質問を受け取ることで、作品にどんどん意味が宿っていったこと。自分の世界は自分にとって当たり前すぎて気づけないからこそ、他者の視点によって無意識だった新しい自分に出逢っていく瞬間が何度も訪れました。私が望む理想の自分は『人を愛し、人に愛され、安心して、自由に自己表現できる私』だと気づきました。人と関わるのが怖いけれど、本当は深く関わり合いたい。ひとつの文章にまとめるために、みんなで納得できるまで考え抜くことができて本当によかったです。」
(30代・医療関係者)
結び:自分を通して生み出される「エッセンス」を愛する
自分を通して生み出されるものには、必ず自分だけの“エッセンス(本質)”が含まれています。
つくるプロセスでは分からなくても、出来上がった立体的な作品を通じて、そして他者からの温かいフィードバックによって、それはありありと浮かび上がってきます。だからこそ、アートワークは奥深く、面白いのです。
頭だけでこねくり回す自己理解ではなく、手足を動かし、童心に帰って楽しみながら自分を発見していく。
それこそが、人が自分本来の輝きを取り戻す最短ルートなのかもしれません。
素晴らしい場を共に作ってくれたゆうじさん、そして勇気を持って自らの内面を表現してくれたメンバーの皆さん、本当にありがとうございました!
