【チーム・ビルディング研修導入事例】「切り換えよう」の先にある、しなやかな強さへ。恐れを超えて、互いに学びあうチームへの転換。

静岡県の常葉大学附属中学・高等学校の強豪バスケットボールチームを率いる監督「のこさん」こと佐野先生。全国大会出場という高い壁を前に、チームは「関係性の維持」と「勝利への執着」の間で揺れていました。チームの安心・安全な土台はできている。けれど、勝負所で一歩踏み込めない――。そんなチームが、チームビルディング研修を経て、なぜ率直に伝えあい、学びあえるほどの変容を遂げたのか。その舞台裏を伺いました。
「いい関係」という名の、あと一歩の壁
ーー研修を導入される前、チームにはどのような課題があったのでしょうか?
のこさん: 一言で言えば、「関係性を壊したくない」という思いが強すぎて、その一歩先に踏み込めない状態でした。私が監督を引き継いでから、かつての監督と選手の暗黙のパワーバランスからは脱却し、和気あいあいとした信頼関係のあるチーム作りを2年間かけてしてきました。心理的安全性の土台はやっとできた。けれど、どこか「しなやかな強さ」が足りなかったんです。
例えば、練習中にちょっと厳しい指摘をすると、チーム全体が「チーン……」と沈んでしまう。大事な試合でミスをしても、周囲は「切り換えよう」と声をかけるだけで終わってしまう。本来なら「今のプレー、どうすればよかったのか?」と率直にフィードバックし、改善すべきなのに、関係性を維持することに終始して、勝ちきれない試合がありました。

ーー「勝ちたい」けれど「言えない」。そのジレンマを解決するために、これまで取り組んできたことはありますか?
のこさん: 仏教の教えやメンタルトレーニングの本を読み漁ったり、動画を観たりして学んできました。「感情は手放す」「怒りはコントロールすべきもの」「自我をなくす」……知識としては理解できるのですが、どこか違和感があったんです。感情に蓋をして抑え込むことが、本当に「強いチーム」に繋がるのだろうか、と。そんな違和感を抱えたまま、自分の感情をコントロールしてぶっきらぼうに選手に関わる日々でした。
「感情は大切にしていい」目から鱗が落ちた出会い
ーーそんな中、今回の研修を依頼しようと決めた「決め手」は何だったのでしょうか。
のこさん: 私自身が以前個人として参加したみづきさん主催のプログラム「人間理解の探究Camp」での体験が衝撃的だったからです。自分を縛っていた「こうせねばならない」という鎧が外れる感覚がありました。人間の感情のメカニズムを知り、「感情を大切にしていいの!?」「ありのままでいいの!?」と衝撃を受けました。感情に蓋をせず、それをエネルギーに変えて次につなげる。あぁ、自分の違和感は間違っていなかったんだと答え合わせができた気がしました。
この「学びの楽しさ」と「圧倒的な人間理解の質の高さ」を、ぜひ子供たちにも分かち合いたい。全国大会出場の壁を突破するために、率直にツッコミを入れ合い、フィードバックし合っても壊れないチームになってほしい。そう願って依頼を決めました。
ちなみに当初は中・高の両方にチームビルディング研修をしていただこうと思ったのですが、事前にヒアリングしていただいたときに「課題が異なるので中学は研修というアプローチじゃない」と率直に言われたことも目から鱗でした。次の日から自分の在り方を見直したところ、中等部については私自身の在り方を変えるだけでチームに変容が起きました。
自分たちで対話をして、学びあうワンチームへ
ーー生徒たちは、研修を通じてどんな体験をされていましたか?
のこさん:生徒たち全員に感想レポートを書いてもらいました。「研修を受けてから自分の生活を振り返ると頭の中でチェッカーがはたらいている場面が多いことに気が付いた」「失敗やミスを宝物のとして受け入れる姿勢が身に着いた」「意見が異なっても相手の背景を聴いて、相手と異なる意見を出しても大丈夫だと思えるチームにしていきたい」などといった感想がありました。


今回の研修を経て、真のチームのつよさとは何かを、みんなに感じ取ってもらえたんじゃないかなと思います。
ーー実際に研修を行ってから、生徒たちにどのような変化が見られましたか?
のこさん: 起きてほしかった「ブレイクスルー」が起きました。一番の変化は、選手たち自身が問題を避けなくなったことです。以前なら雰囲気が悪くなるのを恐れて「次行こう!」と切り替えてしまい言えなかったことも、「ちょっと1回集まろう!」「今のもう一回やってみよう!」と自分たちで向き合うための対話の時間を作るようになりました。新1年生の前でも、堂々とその姿を見せられるようになったんです。前と違って、いい意味で遠慮がなくなりました。
あとは、チームミーティングの際に、円になって集まるんですけど、その円が明らかに小さく密度が濃くなりましたね。物理的な距離感も変わるんだな、という気づきがありました。

知識ではなく「在り方」をアップデートしたい人へ
ーー最後に、この研修をどのような方に薦めたいですか?
のこさん: 「自分一人でなんとかしなきゃ」と抱え込んでいるリーダーや、周囲に気を遣いすぎて愚痴ひとつ吐けない人たちにこそ受けてほしいです。
この研修は、単なるスキル習得の研修ではありません。自分のことを深く知り、知識ではなく「在り方」そのものをアップデートする体験です。チームの停滞を感じているなら、一度「取り繕うこと」をやめて、この深い深い人間理解と対話の世界に飛び込んでみてほしいですね。きっと、想像もしなかった「本当のつよさ」に出会えるはずです。
取材を終えて: 「切り換えよう」という優しい言葉の裏に隠されていた、勝ちきれない悔しさ。それを「率直な対話」へと昇華させた監督のこさんの情熱が、選手たちの表情を劇的に変えました。感情を排除するのではなく、力に変える。そのアプローチが、チームに新しい風を吹き込んでいます。